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建設業の財務諸表の作り方|決算書からの組替え5ステップと勘定科目対応表

2026-08-06 公開 | 執筆:高林栄二(行政書士・高林栄二行政書士事務所)

事業年度終了届(決算変更届)で最も手間がかかるのが財務諸表です。税理士に作ってもらった決算書をそのまま添付することはできず、建設業法で定められた様式に勘定科目を組み替えて作り直す必要があります。

この記事では、決算書から建設業財務諸表を作る手順を5つのステップに分けて解説します。

本記事は愛知県知事許可を前提とした一般的な情報です。様式の記載方法や添付書類の取扱いは都道府県によって異なる場合がありますので、提出先の手引きもあわせてご確認ください。

なぜ決算書をそのまま使えないのか

建設業は、工事の受注から完成・引渡しまでの期間が長く、決算日の時点で「まだ完成していない工事」の原価や、先に受け取った前受金が残ります。これを一般の決算書と同じ科目で表すと、会社ごとに表示がばらついて比較ができません。

そこで建設業法では、売上高は「完成工事高」、売掛金は「完成工事未収入金」というように、建設業に特化した勘定科目の分類を国が定めています(国土交通省告示「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類」)。財務諸表を組み替える作業は、この分類に合わせる作業だといえます。

作成する財務諸表は法人4種類・個人2種類

事業年度終了届に添付する財務諸表は、法人か個人事業主かで様式が異なります。

書類様式法人個人事業主
貸借対照表第15号 / 第18号第15号第18号
損益計算書
(完成工事原価報告書を含む)
第16号 / 第19号第16号第19号
株主資本等変動計算書第17号必要不要
注記表第17号の2必要不要
附属明細表第17号の3一部のみ不要

附属明細表(様式第17号の3)が必要なのは、株式会社のうち資本金が1億円を超えるもの、または直前の貸借対照表の負債合計が200億円以上のものに限られます。中小の建設業者であれば通常は不要です。

また、事業報告書(任意様式・写し可)は株式会社のみ添付します。

Step1|単位を千円にそろえる

建設業財務諸表の金額は千円単位で表示し、端数処理は全体で統一します(原則は切捨て)。

ここで注意したいのが合計欄の数字です。合計は「円単位の金額を合計してから千円単位に直した数字」を書きます。そのため、千円単位で表示した各科目を足し上げても、合計欄と一致しないことがあります。これは誤りではありません。

なお、会社法上の大会社にあたる場合は百万円単位で表示することもでき、そのときは様式の「単位:千円」を「単位:百万円」に修正します。

Step2|売上と原価を「建設業」と「兼業」に分ける

損益計算書(様式第16号)では、売上高を完成工事高兼業事業売上高の2つに分けます。原価も同じく完成工事原価と兼業事業売上原価に分かれます。

迷いやすいのが「どちらに入れるか」の線引きです。

内容計上先
許可を受けている業種の建設工事完成工事高
許可を受けていない業種の建設工事完成工事高
保守点検・維持管理業務(庭木の剪定など)
役務の提供にあたる業務
兼業事業売上高
資材の製造・販売など兼業事業売上高

「工事のように見えるが役務の提供にあたる業務」が兼業側に入る点が見落としがちです。逆に、許可を持っていない業種の工事であっても、建設工事であれば完成工事高に含めます。

Step3|貸借対照表の勘定科目を組み替える

貸借対照表(様式第15号)で組替えが必要になる主な科目は次のとおりです。

決算書の科目建設業財務諸表の科目注意点
現金及び預金現金預金
売掛金完成工事未収入金完成工事高に計上した請負代金の未収額。兼業事業売上に係る売掛金は含めず、別に「売掛金」として記載します
仕掛品未成工事支出金決算日時点で完成していない工事に投じた原価
原材料・貯蔵品材料貯蔵品
買掛金工事未払金工事に係る未払金のみ。兼業事業売上原価に係るものは別に「買掛金」として記載します
前受金未成工事受入金完成していない工事について受け取った前受金

ここで見落とされやすいのが消費税の扱いです。税抜経理を採用している場合でも、工事未払金には取引に係る消費税額および地方消費税額を含めて計上します。

もうひとつ、長期借入金の振替も間違えやすいポイントです。分割返済の定めがある借入金は、決算期後1年以内に返済する予定額を算定し、流動負債の「短期借入金」に振り替えます。当座借越もこの短期借入金に計上します。

Step4|完成工事原価報告書を4区分で作る

完成工事原価報告書は、原価を材料費・労務費・外注費・経費の4区分に分けて表示します。製造原価報告書を作っている会社でも、区分の考え方が異なるため、そのまま転記することはできません。

区分内容
材料費工事のために直接購入した材料費等
労務費工事に従事した直接雇用の作業員(監督員の指示のもと直接工事に従事している正社員・臨時社員等)の給料等。外注費のうち、土工事や仮設工事等で契約内容の大部分が労務費であるものは「労務外注費」として内書きできます
外注費下請工事契約額(労務費に含めたものを除く)
経費材料費・労務費・外注費以外の費用。うち「人件費」は、工事監督員および現場事務所の事務職員等の給料、退職金(繰入額を含む)、法定福利費、福利厚生費等

最も判断に迷うのが人件費をどこに入れるかです。次の3つに振り分けます。

  • 現場で工事に従事する作業員の給料 → 労務費
  • 工事監督員・現場事務所の事務職員の給料 → 経費(うち人件費)
  • 本支店の管理部門・営業部門・兼業部門の人件費 → 販売費及び一般管理費の「従業員給料手当」

なお販売費及び一般管理費では、「雑費」に属する費用が販売費及び一般管理費の総額の10%を超える場合、その費用を明示する科目を用いて掲記します。様式にない科目を使うときは、使用していない勘定科目を二重線で消し、その右に該当科目を記載します。

Step5|様式をまたいだ数字の整合性を確認する

建設業財務諸表は、書類をまたいで数字が一致していることが求められます。提出前に次の5点を確認してください。

  1. 完成工事高(様式第16号)= 直前3年の工事施工金額(様式第3号)の直前決算の合計欄
  2. 様式第3号の業種ごとの合計額 = 工事経歴書(様式第2号)に記載した各業種の合計額
  3. 完成工事原価報告書の完成工事原価 = 損益計算書の完成工事原価
  4. 貸借対照表「純資産の部」の各項目 = 株主資本等変動計算書(様式第17号)の各欄
  5. 損益計算書の当期純利益 = 株主資本等変動計算書の「当期純利益」と「繰越利益剰余金」が交差する欄

1つの数字を直すと連動して複数の書類が変わるため、手作業では修正のたびに全体を見直すことになります。ここが財務諸表作成で最も時間を取られる部分です。

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完成工事高・完成工事未収入金などへの組替えを自動で行い、Excel形式でダウンロードできます。

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よくある質問

Q. 税理士が作成した決算書をそのまま添付できますか?
A. できません。建設業法施行規則の別記様式に、建設業独自の勘定科目へ組み替えて作成し直す必要があります。売上高は完成工事高、売掛金は完成工事未収入金といったように、科目名と区分が変わります。
Q. 完成工事高と兼業事業売上高はどう分けますか?
A. 建設工事の請負による売上が完成工事高、それ以外が兼業事業売上高です。保守点検や維持管理業務(庭木の剪定など)といった役務の提供にあたる業務の売上は兼業事業売上高に計上します。許可を受けていない業種の建設工事は完成工事高に含めます。
Q. 金額は税込・税抜のどちらで書きますか?
A. 決算書の会計処理にあわせます。様式第3号(直前3年の工事施工金額)には税込・税抜のいずれかに丸を付ける欄があります。ただし税抜経理の場合でも、貸借対照表の工事未払金には取引に係る消費税額および地方消費税額を含めて計上します。
Q. 個人事業主も法人と同じ様式ですか?
A. 異なります。個人事業主の貸借対照表は様式第18号、損益計算書は様式第19号です。株主資本等変動計算書(様式第17号)と注記表(様式第17号の2)は法人のみが提出するもので、個人事業主は不要です。

根拠条文・参考資料

  • 建設業法 第11条第2項(毎事業年度経過後4ヶ月以内の届出義務)
  • 建設業法施行規則 別記様式第15号〜第19号(財務諸表の様式)
  • 国土交通省告示「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類」
  • 愛知県「建設業法による変更届等の手引(事業年度終了届編)」令和8年4月

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