個人事業主の財務諸表の書き方|様式第18号・第19号
個人事業主の建設業者が事業年度終了届を出すときは、法人とは別の様式で財務諸表を作ります。貸借対照表は様式第18号、損益計算書は様式第19号です。法人の様式と似ていますが、純資産の部の4項目や、損益計算書の中に工事原価の内訳を書く点など、個人ならではの書き方があります。
この記事では、愛知県の手引きの記載例をもとに、個人事業主が添付する書類、様式第18号・第19号の欄ごとの書き方、提出前に確認したいポイントを整理します。
本記事は愛知県知事許可を前提とした一般的な情報です。様式の記載方法や添付書類の取扱いは都道府県によって異なる場合がありますので、提出先の手引きもあわせてご確認ください。
個人事業主が添付する書類
愛知県の手引きの添付書類一覧では、個人事業主と法人で添付する書類が分かれています。個人事業主の欄に○が付いているのは次のとおりです。
| 書類 | 様式 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 表紙(事業年度終了届出書) | ― | ○ |
| 工事経歴書 | 第2号 | ○ |
| 直前3年の工事施工金額 | 第3号 | ○ |
| 貸借対照表 | 第18号 | ○ |
| 損益計算書 | 第19号 | ○ |
| 事業税納税証明書(納付すべき額及び納付済額の記載のある証明書) | 県税事務所発行のもの | ○ |
| 株主資本等変動計算書・注記表・事業報告書・附属明細表 | 第17号・第17号の2ほか | 対象外(法人のみ) |
このほか、使用人数(様式第4号)などは変更があれば同時に提出するよう案内されています。法人の様式との対応は「建設業の財務諸表の作り方|決算書からの組替え5ステップと勘定科目対応表」でも整理しています。
まず押さえる3つの共通ルール
①決算日は12月31日
手引きの記載例では、個人の決算日は毎年12月31日と注記されています。貸借対照表は「令和○年12月31日現在」、損益計算書は「自 令和○年1月1日 至 令和○年12月31日」と書きます。あわせて、個人で決算未到来の場合は記入しない旨も注記されています。
②千円単位で表示する
記載例では「単位・千円」で表示し、円単位の金額を合計してから千円単位で表示するよう案内されています。そのため、千円単位で表示した各項目を足しても、合計欄と一致しない場合があると注記されています(後述の「検算のときの注意」も参照)。
③消費税の会計処理の方法に○をつける
様式第18号の末尾には「消費税及び地方消費税に相当する額の会計処理の方法」の欄があり、税抜方式・税込方式・免税事業者につき税込のうち該当するものに○をつけます。消費税の免税事業者は「免税事業者につき税込」に○をつけるよう案内されています。経営事項審査(経審)を受ける場合の消費税の扱いは、経審の手引きもあわせて確認してください。
様式第18号(貸借対照表)の書き方
資産の部
| 区分 | 科目 | 記載例の注記 |
|---|---|---|
| 流動資産 | 現金預金/受取手形/完成工事未収入金/有価証券/未成工事支出金/材料貯蔵品/その他/貸倒引当金(※債権償却特別勘定を含む) | 完成工事未収入金は、完成工事高に計上した請負代金の未収額を計上します(売掛金は含みません) |
| 固定資産 | 建物・構築物/機械・運搬具/工具器具・備品/土地/建設仮勘定/破産更生債権等/その他 | 現存価格(減価償却後の額)を計上します |
流動資産の「その他」または固定資産の「その他」に属する資産で、その金額が資産の総額の100分の5を超えるものは、その資産を明示する科目で記載するよう注記されています。
負債の部
| 区分 | 科目 | 記載例の注記 |
|---|---|---|
| 流動負債 | 支払手形/工事未払金/短期借入金/未払金/未成工事受入金/預り金/○○引当金/その他 | 工事未払金には買掛金は含みません。短期借入金は決算期後1年以内に返済することとなる額を計上します(1年以内に完済するか否かを問いません)。賞与引当金・製品保証引当金等は引当金の行へ計上します |
| 固定負債 | 長期借入金/その他 | 長期借入金は決算期後1年を越えた後に返済する額を計上します。分割返済の定めがあるものは、決算後1年以内の分割返済予定額を流動負債(短期借入金)に振り替えます。退職給付引当金は「その他」へ計上します |
純資産の部|個人ならではの4項目
個人事業主には資本金や株主資本の考え方がないため、純資産の部は次の4項目で表します。
| 項目 | 記載例の注記 | 記載例(千円) |
|---|---|---|
| Ⅰ 期首資本金 | 前期の純資産合計(もしくは資本合計)を計上します | 16,326 |
| Ⅱ 事業主借勘定(※価格変動準備金を含む) | 資産の譲渡益等を計上します | 430 |
| Ⅲ 事業主貸勘定 | 資産の譲渡損及び生活費等を計上します | △2,735 |
| Ⅳ 事業主利益 | 損失または欠損の場合は△表示で計上します。損益計算書(様式第19号)の事業主利益と一致させます | 1,064 |
| 純資産合計 | Ⅰ+Ⅱ-Ⅲ+Ⅳ | 15,085 |
記載例では 16,326+430-2,735+1,064=15,085 となり、負債合計26,394と合わせた負債純資産合計41,480が、資産合計41,480と一致しています。期首資本金は前期の純資産合計なので、前期に提出した様式第18号の純資産合計と照らし合わせると確実です。
確定申告で使う決算書と建設業の様式では、科目の並びや名前が同じとは限りません。どの数字をどの欄に入れるか迷う場合は、提出先の窓口や顧問の税理士に確認してください。
様式第19号(損益計算書)の書き方
売上高は「完成工事高」と「兼業事業売上高」に分ける
| 項目 | 記載例の注記 | 記載例(千円) |
|---|---|---|
| 完成工事高 | 様式第3号の直前決算の工事施工金額の合計欄の金額と一致します | 41,834 |
| 兼業事業売上高 | 建設業以外の売上高を計上します | 21,966 |
| 売上高合計 | 63,800 |
完成工事高と兼業事業売上高の分け方は「完成工事高とは|兼業事業売上高との違いと経審への影響」で詳しく整理しています。
売上原価の中に工事原価の内訳を書く
法人は損益計算書とは別に完成工事原価報告書を作りますが、個人事業主の様式第19号では、売上原価の「完成工事原価」の中に内訳を書く形になっています。
| 内訳 | 記載例の注記 | 記載例(千円) |
|---|---|---|
| 材料費 | 32,756 | |
| 労務費(※直接雇用の労務費)(うち労務外注費) | 工事に従事した直接雇用の作業員に対する賃金、給料手当等を計上します | 2,371 |
| 外注費 | 1,200 | |
| 経費(※従業員給与を含む) | 工事に要した従業員(工事現場における工事に従事した技術、事務職員等)の給料手当等を計上します。完成工事補償引当金繰入額もここに計上します | 131 |
| 完成工事原価 | 36,458 |
このあとに兼業事業売上原価(記載例18,470)が続き、売上総利益は「完成工事総利益」と「兼業事業総利益」に分けて書きます(記載例 5,375+3,496=8,871)。
販売費及び一般管理費は16科目
記載例の販売費及び一般管理費は、従業員給料手当・退職金・法定福利費・福利厚生費・修繕維持費・事務用品費・通信交通費・動力用水光熱費・広告宣伝費・交際費・寄付金・地代家賃・減価償却費・租税公課・保険料・雑費の16科目です。法人の様式にある役員報酬などの科目はありません。記載例の注記では、退職給付引当金繰入額は退職金に、貸倒引当金・債権償却特別勘定の繰入は雑費に計上するとされています。
営業外損益と事業主利益
営業利益(記載例2,010)に営業外収益(受取利息及び配当金・その他)を加え、営業外費用(支払利息・その他)を差し引いたものが事業主利益です(記載例1,064)。損失の場合は△表示で計上します。この事業主利益が、様式第18号の「Ⅳ 事業主利益」と一致します。各種の引当金・準備金の取崩しは営業外収益の「その他」に計上するよう注記されています。
また、工事進行基準による完成工事高が完成工事高の総額の10分の1を超える場合は、様式末尾の注にその額を書くよう案内されています。
検算のときの注意|千円単位の合計はずれることがある
手引きの記載例でも、千円単位の各項目を足した値と合計欄が一致していない箇所があります。
| 欄 | 各項目を千円単位で足した値 | 記載例の合計欄 |
|---|---|---|
| 流動資産合計 | 24,854 | 24,856 |
| 固定資産合計 | 16,621 | 16,624 |
| 販売費及び一般管理費 | 6,858 | 6,861 |
これは、円単位の金額を合計してから千円単位にしているためで、手引きでも「千円単位で表示したものを合計したものではありません」と注意されています。検算は円単位の元の数字で行い、千円単位では数千円程度のずれが出ることを前提に見ると混乱しにくくなります。
一般建設業の財産要件(個人事業主の場合)
手引きの様式第18号の記載例には、個人事業主の財産要件の目安が掲載されています。
- 一般建設業:期首資本金・事業主借勘定・事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額(=純資産合計)に、負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額が500万円以上であれば要件を満たします
- 特定建設業:法人と同様ですが、窓口へ問い合わせるよう案内されています
確認資料の持参が必要となる場合があり、手引き(申請手続編)の確認資料の項目を確認するよう案内されています。また、個人事業主で特定建設業を新規申請する場合に限り、基準日が4週間以内の預金残高証明書もしくは発行日が4週間以内の融資証明書が必要とされています。財産要件の判定は、提出先の窓口で確認してください。
サポ10は、決算書PDFをアップロードすると建設業財務諸表の様式に自動転記するWebサービスです。
個人事業主の様式第18号・第19号にも対応しています。出力されるのは下書きですので、元の決算書と照合し、必要な補足・修正を行ったうえでご提出ください。
よくある質問
- Q. 個人事業主の財務諸表は何日現在で作りますか?
- A. 愛知県の手引きの記載例では、個人の決算日は毎年12月31日とされています。貸借対照表は12月31日現在、損益計算書は1月1日から12月31日までの期間で作成します。
- Q. 個人事業主も株主資本等変動計算書や注記表を出しますか?
- A. 出しません。愛知県の手引きの添付書類一覧では、株主資本等変動計算書(様式第17号)・注記表(様式第17号の2)・事業報告書・附属明細表は個人事業主の欄が対象外になっています。個人事業主の財務諸表は貸借対照表(様式第18号)と損益計算書(様式第19号)です。
- Q. 個人事業主は完成工事原価報告書を別に作りますか?
- A. 愛知県の手引きの記載例では、個人事業主の損益計算書(様式第19号)の売上原価の中に、完成工事原価の内訳として材料費・労務費・外注費・経費を書く形になっています。添付書類一覧にも、個人事業主向けに別の完成工事原価報告書は挙げられていません。
- Q. 千円単位にしたら合計が合いません。間違いですか?
- A. 必ずしも間違いではありません。愛知県の手引きの記載例では、円単位の金額を合計してから千円単位で表示するため、千円単位で表示したものを合計しても一致しない場合があると注記されています。
根拠条文・参考資料
- 建設業法 第11条第2項(事業年度終了届)(e-Gov法令検索)
- 建設業法施行規則 第10条(事業年度終了届に添付する書類)・別記様式第18号・第19号(e-Gov法令検索)
- 愛知県「建設業法による変更届等の手引(事業年度終了届編)」令和8年4月(p.1 添付書類一覧、p.19-20 様式第18号 貸借対照表の記載例と財産要件、p.21 様式第19号 損益計算書の記載例)