完成工事高とは|兼業事業売上高との違いと経審への影響
建設業の決算書や許可関係の書類を見ていると、必ず出てくるのが「完成工事高」という言葉です。一般的な会社でいう売上高にあたるものですが、建設業では兼業事業売上高との区別や、複数の書類にまたがる扱われ方など、独特のルールがあります。この記事では、完成工事高の定義と、財務諸表・様式第3号・工事経歴書という3つの書類、そして経営事項審査(経審)でどうつながっているかを整理します。
本記事は愛知県知事許可を前提とした一般的な情報です。様式の記載方法や添付書類の取扱いは都道府県によって異なる場合がありますので、提出先の手引きもあわせてご確認ください。
完成工事高とは何か
完成工事高とは、建設工事の請負によって得た売上のことです。建設業法施行規則にもとづく損益計算書(法人は様式第16号、個人事業主は様式第19号)では、売上高を「完成工事高」と「兼業事業売上高」の2つに分けて記載するよう定められています。
ポイントは、建設業の許可を受けている業種かどうかにかかわらず、建設工事の請負であれば完成工事高に含めるという点です。逆に、工事のように見えても建設工事の請負にあたらない業務は、次に説明する兼業事業売上高に区分されます。
兼業事業売上高との違い
建設工事の請負による売上が完成工事高、それ以外が兼業事業売上高です。保守点検や維持管理業務(庭木の剪定など)といった役務の提供にあたる業務の売上は兼業事業売上高に計上します。許可を受けていない業種の建設工事は完成工事高に含めます。
| 内容 | 計上先 |
|---|---|
| 許可を受けている業種の建設工事 | 完成工事高 |
| 許可を受けていない業種の建設工事 | 完成工事高 |
| 保守点検・維持管理業務(庭木の剪定など) 役務の提供にあたる業務 | 兼業事業売上高 |
| 資材の製造・販売など | 兼業事業売上高 |
「工事のように見えるが役務の提供にあたる業務」が兼業側に入る点が見落としがちです。逆に、許可を持っていない業種の工事であっても、建設工事であれば完成工事高に含めます。原価も同じく完成工事原価と兼業事業売上原価に分かれ、完成工事原価はさらに完成工事原価報告書で材料費・労務費・外注費・経費の4区分に分けて記載します(内訳の詳しい判断基準は別記事「建設業の財務諸表の作り方」を参照)。
完成工事高が登場する3つの書類
①財務諸表(様式第16号・第19号)の損益計算書
損益計算書の売上高の一番上に記載されます。兼業事業売上高とあわせた合計が売上高の総額です。勘定科目の対応関係は別記事「建設業財務諸表と決算書の違い」の一覧表もご参照ください。
②様式第3号「直前3年の各事業年度における工事施工金額」
事業年度終了届には、工事経歴書(様式第2号)とあわせて、業種別の完成工事高をまとめた様式第3号も提出します。様式の名前は「直前3年」ですが、愛知県の手引では、事業年度終了届では届け出る事業年度の分だけを書けばよく、3年分書く必要はないとされています。財務諸表の完成工事高は、様式第3号の直前決算の合計欄と一致している必要があります。提出前に、両方の書類の数字が食い違っていないか必ず突き合わせてください。
③工事経歴書(様式第2号)
工事経歴書に記載する完成工事の範囲は、業種ごとの年間完成工事高を基準に決まります。経審を受けない場合は完成工事高の60%を超えるまで(または10件のどちらか少ない件数)、経審を受ける場合は元請工事の70%まで記載したうえで全体の70%まで、という2段階の基準です。この基準の詳しい計算方法と記載例は、別記事「工事経歴書の書き方」で解説しています。
経営事項審査(経審)における完成工事高(X1評点)
経審を申請すると、完成工事高は「完成工事高評点(X1)」という評価項目の基礎になります。X1は、工事の種類(業種)ごとの年間平均完成工事高をもとに評点が決まる項目です。
年間平均の算定方法には、直前2年間の平均と直前3年間の平均の2通りがあり、申請者が選択できます。経審の申請様式(工事種類別完成工事高・工事種類別元請完成工事高の帳票)を見ると、この計算方法を選ぶ欄は1か所しかなく、2枚目以降の用紙には記入が不要とされています。つまり、業種ごとに2年平均・3年平均を使い分けることはできず、申請全体で1つの方法に統一する必要があります。
記載する完成工事高は、消費税抜きの金額を千円未満切り捨てで記入します(免税事業者を除く)。あわせて、一つの請負契約の完成工事高を分割して計上したり、二重に計上したりすることはできないとされています。裏付け資料として何を求められるかは申請先によって異なります(東京都の記載要領では、様式第3号が添付された変更届出書(決算)の副本などが挙げられています)。申請先の経審の手引でご確認ください。
経審を受ける場合は、事業年度終了届で提出する財務諸表そのものも消費税抜きの処理が必要です(免税事業者を除く)。税込みのまま提出していた場合は、経審の際に差し替えが必要になります。詳しくは別記事「建設業の財務諸表の作り方」でも解説しています。
経審の総合評定値(P点)は、X1のほか複数の評価項目を組み合わせて算定されます。点数の詳しい計算や対策は専門的な内容になるため、経審の進め方については行政書士や申請窓口にご確認ください。
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よくある質問
- Q. 完成工事高とは何ですか?
- A. 建設工事の請負によって得た売上のことです。許可を受けている業種かどうかを問わず、建設工事の請負であれば完成工事高に含まれます。保守点検や維持管理業務など、役務の提供にあたる業務の売上は兼業事業売上高に区分されます。
- Q. 完成工事高と兼業事業売上高はどう見分けますか?
- A. 建設工事の請負契約にもとづく売上かどうかで判断します。庭木の剪定などの維持管理業務は工事のように見えても役務の提供にあたるため兼業事業売上高です。一方、許可を受けていない業種の建設工事は完成工事高に含めます。
- Q. 完成工事高は財務諸表のどこに出てきますか?
- A. 損益計算書(法人は様式第16号、個人事業主は様式第19号)の売上高の内訳として、兼業事業売上高と分けて記載します。あわせて提出する様式第3号「直前3年の各事業年度における工事施工金額」の直前決算の合計額と一致させます。
- Q. 経営事項審査(経審)とどう関係しますか?
- A. 経審を受ける場合、完成工事高評点(X1)は工事の種類ごとの完成工事高の直近2年平均または3年平均をもとに算定されます。申請様式には計算方法を選ぶ欄が1か所しかなく、業種ごとに2年平均・3年平均を使い分けることはできません。
根拠条文・参考資料
- 建設業法施行規則 様式第十六号・様式第十九号(損益計算書)、様式第三号(直前3年の各事業年度における工事施工金額)
- 国土交通省告示「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類」
- 愛知県「建設業法による変更届等の手引(事業年度終了届編)」令和8年4月(損益計算書・完成工事原価報告書の記載例)
- 愛知県「経営事項審査申請等の手引」令和8年7月(完成工事高の消費税抜き処理について)
- 東京都都市整備局「工事種類別完成工事高・工事種類別元請完成工事高の書き方」(経営事項審査の全国共通様式・記載要領の例として参照)