工事経歴書の書き方|経審の有無で変わる記載ルール
事業年度終了届(決算変更届)の添付書類のうち、財務諸表と並んで作成に手間がかかるのが工事経歴書(様式第2号)です。「その年に完成した工事を全部書けばいいのでは」と思われがちですが、実際にはどの工事を、どの順番で、何件まで書くかに細かいルールがあり、しかも経営事項審査(経審)を受けるかどうかで基準が変わります。この記事では、愛知県の手引きをもとに、そのルールを整理します。
本記事は愛知県知事許可を前提とした一般的な情報です。様式の記載方法や添付書類の取扱いは都道府県によって異なる場合がありますので、提出先の手引きもあわせてご確認ください。
工事経歴書(様式第2号)とは
工事経歴書は、建設業法施行規則に定められた様式第二号(第2条、第13条の2、第13条の3、第19条の8関係)にもとづく書類で、許可を受けている建設工事の種類(業種)ごとに、その事業年度に完成した工事の実績を一覧にするものです。新規許可申請・更新申請のほか、毎年の事業年度終了届でも提出が必要です。
記載する完成工事の範囲は、経営事項審査を受けるかどうかで異なります。まずは受けない場合から見ていきます。
経営事項審査を受けない場合の書き方
公共工事の入札に参加せず、経営事項審査を申請しない事業者の場合、工事経歴書に記載する完成工事の選び方は次のとおりです。
- 対象は、申請(届出)する日の属する事業年度の前事業年度に完成した建設工事(完成工事)。保守点検や維持管理業務(例:樹木の剪定)など、役務の提供にあたる業務は工事に含めません
- 業種ごとの年間完成工事高の60%を超えるまで、または10件までのどちらか少ない件数を、請負金額の大きい順に記載します
- その業種の工事実績が対象年度になければ、「該当工事なし」と記載します
許可を受けていない業種の工事を請け負っていた場合は、「その他工事」として別途工事経歴書を作成します。考え方は上と同じ(完成工事高の60%または10件の少ない方)ですが、その他工事の実績が全くない場合は、その他工事の工事経歴書自体を作成しません。
経営事項審査を受ける場合の書き方
経審を申請する場合は、より細かい2段階のルールに従って記載する工事を選びます。愛知県の手引きでは、許可を受けている業種ごとに次の手順で様式第二号を作成するよう案内されています。
ステップ1:元請工事を70%まで記載する
- 当該業種の元請工事だけを、金額の大きい順に記載する
- 元請工事の合計金額の70%になるまで記載する
- 70%に達する前に、軽微な工事が10件記載されたら、そこで元請工事の記載を終了する
ステップ2:残りの工事を全体の70%まで記載する
- ステップ1で記載しなかった元請工事と下請工事を、あわせて金額の大きい順に記載する
- ステップ1で記載した金額も含めて、当該業種の合計金額の70%になるまで記載する
- 軽微でない工事がすべて記載された上で、ステップ1の分も含めて軽微な工事が合計10件記載されたら、そこで記載を終了する
つまり「70%ラインに届くまで」と「軽微な工事が10件たまるまで」のどちらか早いほうで記載を打ち切る、という考え方をステップごとに2回適用する形になります。
「軽微な工事」の金額基準
ここでいう軽微な工事とは、税込500万円未満(税抜約455万円未満)の工事を指します。ただし建築一式工事は税込1,500万円未満(税抜約1,364万円未満)です。この金額は、建設業許可がなくても請け負える軽微な建設工事の基準(建設業法施行令第1条の2)と同じ考え方によるものです。
簡単な例
例えば、とび・土工・コンクリート工事の元請工事が請負金額の大きい順に800万円・500万円・300万円・200万円・150万円(合計1,950万円)だったとします。70%ライン(1,365万円)に達するのは800+500+300=1,600万円の時点なので、ステップ1(元請工事)では上位3件を記載すれば足ります。残りの200万円・150万円の工事は、ステップ2で下請工事とあわせて金額の大きい順に並べ、全体の70%に届くまでの範囲に入れば記載します。逆に、大口の工事が少なく小口の工事が多い業種では、70%に届く前に軽微な工事(500万円未満)が10件たまってしまい、そこで元請工事の記載が打ち切られるケースもあります。
消費税の書き方に注意
経審を受ける場合の様式は、請負代金の額を消費税抜きの金額(免税事業者は税込みの金額)で記載することが案内されています。一方、経審を受けない場合の様式には税込・税抜のどちらかに丸を付ける欄があり、愛知県の手引では決算書の会計処理にあわせる(税抜経理の場合は税抜の金額を記入する)こととされています。
元請・下請・共同企業体(JV)の書き方と個人情報への配慮
- 元請……施主から直接受注した工事
- 下請……他の建設業者が請け負った工事の一部を請け負ったもの
- 共同企業体(JV)……他社と共同で行った工事は「JV」欄に丸を付けて記載します
請け負った1つの契約ごとに、注文者は請負契約の相手方の商号または名称を記載し、工事名は契約書等から施工箇所と工事内容がわかるよう具体的に記載します。ただし、内容によって個人の氏名が特定される可能性がある場合は、注文者名・工事名をそのまま記載せず、個人が特定されない範囲の記載にとどめる配慮が必要です。契約書や注文書の文言どおりに記載する義務はなく、建設工事の種類が特定できる程度の具体性があれば足ります。
様式第3号(直前3年の工事施工金額)との整合性
工事経歴書を作成したら、あわせて提出する様式第3号「直前3年の各事業年度における工事施工金額」の業種ごとの合計額と、様式第2号に記載した各業種の完成工事高の合計額が一致しているか確認してください。この整合性チェックは財務諸表側の科目とも関わるため、詳しくは別記事「建設業財務諸表と決算書の違い」もあわせてご覧ください。
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よくある質問
- Q. 経営事項審査を受ける場合と受けない場合で、工事経歴書の書き方はどう違いますか?
- A. 受けない場合は、業種ごとの年間完成工事高の60%を超えるまで、または10件までのどちらか少ない件数を、請負金額の大きい順に記載します。受ける場合は、まず元請工事だけを金額の大きい順に合計金額の70%になるまで記載し、続けて残りの工事(元請・下請とも)を全体の70%になるまで記載します。いずれも軽微な工事が合計10件記載された時点で打ち切ることができます。
- Q. 「軽微な工事」とはどのくらいの金額の工事ですか?
- A. 愛知県の手引きでは、軽微な工事を税込500万円未満(税抜約455万円未満)の工事としています。ただし建築一式工事は税込1,500万円未満(税抜約1,364万円未満)です。この基準は建設業法施行令で定められた、建設業許可がなくても請け負える軽微な建設工事の基準と同じ金額です。
- Q. 対象年度に工事の実績が全くない場合はどう書けばいいですか?
- A. 許可を受けている業種で実績がない場合は「該当工事なし」と記載します。許可を受けていない業種の工事(その他工事)について実績がない場合は、その他工事の工事経歴書自体を作成しません。
- Q. 注文者の会社名や工事名はそのまま書いても構いませんか?
- A. 内容によって個人が特定される可能性がある場合は、注文者名や工事名をそのまま書かず、個人が特定されない範囲の記載に配慮する必要があります。一方で、建設工事の種類が特定できる程度の具体性は必要とされています。
根拠条文・参考資料
- 建設業法施行規則 様式第二号(第2条、第13条の2、第13条の3、第19条の8関係)
- 建設業法施行令 第1条の2(軽微な建設工事の範囲)
- 愛知県「建設業法による変更届等の手引(事業年度終了届編)」令和8年4月(工事経歴書・その他工事・経営事項審査を受ける方の記載要領・様式第三号の各記載例)