ホーム › コラム › 注記表の書き方

注記表の書き方|会社の種類で変わる記載項目

2026-10-08 公開 | 執筆:高林栄二(行政書士・高林栄二行政書士事務所)

法人の事業年度終了届では、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書とあわせて注記表(様式第17号の2)を添付します。数字の組替えが中心の他の財務諸表と違い、注記表は会計方針などを文章で書く書類で、しかも会社の種類によって記載が必要な項目が変わるのが特徴です。

この記事では、愛知県の手引きの記載例と記載要領の抜粋をもとに、自社がどの区分にあたるかの確認方法、区分ごとに記載が必要な項目、書くときの注意点を整理します。

本記事は愛知県知事許可を前提とした一般的な情報です。様式の記載方法や添付書類の取扱いは都道府県によって異なる場合がありますので、提出先の手引きもあわせてご確認ください。

注記表とは|法人だけが添付する書類

建設業法施行規則第10条第1項第1号では、事業年度終了届に添付する書類として、法人について様式第15号から第17号の2までによる貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・注記表を挙げています(株式会社の場合はこれらに事業報告書が加わり、資本金などの条件によっては附属明細表も必要です)。

愛知県の手引きの添付書類一覧でも、注記表(様式第17号の2)は法人のみが添付する書類とされ、個人事業主は不要です。財務諸表全体の様式の対応は「建設業の財務諸表の作り方|決算書からの組替え5ステップと勘定科目対応表」で整理しています。

まず自社の「区分」を確認する

注記表の記載要領では、記載を要する項目を次の4つの区分で分けています。最初に、自社がどれにあたるかを確認します。

区分確認のしかた
会計監査人設置会社会計監査人を置いている株式会社
公開会社(会計監査人なし)会社法第2条第5号の「公開会社」=発行する株式の全部または一部について、譲渡に会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社
株式譲渡制限会社(会計監査人なし)上の「公開会社」にあたらない株式会社=すべての株式について、譲渡に会社の承認を要する旨を定款で定めている会社
持分会社会社法第575条第1項でいう合名会社・合資会社・合同会社

公開会社かどうかは、上場しているかどうかではなく定款の株式の譲渡制限の定めで決まります。一部の株式だけに譲渡制限がある会社は「公開会社」にあたる点に注意してください。迷う場合は定款を確認します。

なお、愛知県の手引きの記載例では、「9 株主資本等変動計算書関係」について「すべての株式会社が(特例有限会社を含む)記載を要します」と注記されています。

区分ごとに記載が必要な項目(一覧)

愛知県の手引きに掲載されている記載要領の抜粋(記載要領1)を表にまとめると、次のとおりです。○が記載要、×が記載不要です。

項目会計監査人設置会社公開会社株式譲渡制限会社持分会社
1 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況○×××
2 重要な会計方針○○○○
3 会計方針の変更○○○○
4 表示方法の変更○○○○
4-2 会計上の見積り○×××
5 会計上の見積りの変更○×××
6 誤謬の訂正○○○○
7 貸借対照表関係○○××
8 損益計算書関係○○××
9 株主資本等変動計算書関係○○○×
10 税効果会計○○××
11 リースにより使用する固定資産○○××
12 金融商品関係○○××
13 賃貸等不動産関係○○××
14 関連当事者との取引○○××
15 一株当たり情報○○××
16 重要な後発事象○○××
17 連結配当規制適用の有無○×××
17-2 収益認識関係○×××
17-3 国際最低課税額に対する法人税等○○○○
18 その他○○○○

表から読み取れるポイントは次のとおりです。

  • すべての区分で必要:2 重要な会計方針、3 会計方針の変更、4 表示方法の変更、6 誤謬の訂正、17-3 国際最低課税額に対する法人税等、18 その他の6項目
  • 株式譲渡制限会社:上の6項目に「9 株主資本等変動計算書関係」を加えた7項目
  • 持分会社:上の6項目のみ(9は×)
  • 公開会社(会計監査人なし):1・4-2・5・17・17-2を除く項目

ただし、経営事項審査を受ける場合は、区分上×の項目でも記載が必要とされているものがあります(後述)。

書き方の注意点

①該当がない項目は「該当なし」と書く

記載要領4の抜粋として、記載を要する項目で該当事項がない場合は「該当なし」と記載するよう案内されています。愛知県の記載例でも、会計方針の変更・表示方法の変更・誤謬の訂正・国際最低課税額に対する法人税等・その他に「該当なし」と書かれています。記載が必要な項目を空欄で出さないようにしましょう。

②重要な会計方針は6つの小項目

「2 重要な会計方針」は次の6つの小項目で構成され、記載例の注記ではすべての法人が記載を要し、該当のない項目は「該当なし」と記入するよう案内されています。

小項目記載のポイント
(1)資産の評価基準及び評価方法棚卸資産などの評価方法を書きます
(2)固定資産の減価償却の方法定額法・定率法など、資産の種類ごとの償却方法を書きます
(3)引当金の計上基準貸倒引当金など、計上している引当金の基準を書きます
(4)収益及び費用の計上基準手引きでは「会計処理上の計上基準を必ず記載」するよう注記されています。記載例では、完成工事高・完成工事原価の認識基準(工事進行基準と工事完成基準の使い分け)と、費用は発生主義である旨が書かれています
(5)消費税及び地方消費税に相当する額の会計処理の方法様式上「税抜方式・税込方式・免税事業者につき税込」から選ぶ形になっています
(6)その他貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表作成のための基本となる重要な事項該当がなければ「該当なし」

(4)は建設業ならではの項目で、工事の売上をいつ計上しているかを書く欄です。決算書の個別注記表や会計処理の実態と食い違わないよう、顧問の税理士などに確認したうえで記載してください。(5)も、財務諸表本体の金額を税込・税抜のどちらで作ったかと一致させます。経営事項審査を受ける場合の消費税の扱いは「建設業の財務諸表の作り方」で触れています。

③株主資本等変動計算書関係(株式会社)

「9 株主資本等変動計算書関係」は、記載例では次の4つの小項目で構成されています。

  • (1)事業年度末日における発行済株式の種類及び数(例:普通株式○○株)
  • (2)事業年度末日における自己株式の種類及び数
  • (3)剰余金の配当
  • (4)事業年度末において発行している新株予約権の目的となる株式の種類及び数

(3)剰余金の配当は、手引きの注記によると、事業年度中に行った剰余金の配当(事業年度末日後に行う配当のうち、配当を受ける者を定める基準日〈会社法第124条第1項〉が事業年度中のものを含む)について、配当を実施した回ごとに、決議機関・配当総額・一株当たりの配当額・基準日・効力発生日を記載します。配当がなければ「該当なし」です。発行済株式数や配当額は、株主資本等変動計算書(様式第17号)の金額と食い違わないか確認しましょう。

④経営事項審査を受ける場合に記載が必要な項目

愛知県の手引きの記載例では、区分にかかわらず、経営事項審査を受審する方は記載が必要と注記されている項目があります。

  • 7 貸借対照表関係(2):保証債務等の欄にある「受取手形割引高」「裏書手形譲渡高」(記載例では千円単位で金額を記入。該当がなくても0千円と書かれています)
  • 8 損益計算書関係(5)研究開発費の総額:この項目は「会計監査人を設置している会社に限る」とされており、会計監査人を設置している会社以外は「該当なし」と記載するよう案内されています

経審を受けるかどうかで扱いが変わる論点は、注記表のほかにも工事経歴書の記載範囲などがあります(「工事経歴書の書き方|経審の有無で変わる記載ルール」参照)。経審を予定している場合は、提出前に窓口で記載方法を確認しておくと安心です。

決算書の「個別注記表」との関係

決算書に個別注記表が付いている会社は多く、会計方針などの内容は共通する部分があります。ただし、建設業法の注記表は様式第17号の2の項目番号・並びで作成し、記載が必要な項目も上の表の区分で決まります。決算書の個別注記表の内容を、様式の該当する番号に当てはめて転記し、記載が必要なのに個別注記表にない項目は「該当なし」とするかどうかを確認する、という順で進めると漏れを防ぎやすくなります。

会計方針の内容そのものの判断(どの評価方法・計上基準を採っているか)は会計・税務の領域です。不明な点は顧問の税理士・公認会計士に確認してください。

サポ10は、決算書PDFをアップロードすると建設業財務諸表の様式に自動転記するWebサービスです。
貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書の転記を時短して、文章で書く注記表の確認に時間を回せます(注記表は利用者の方で作成・確認いただく範囲です)。

サポ10を無料で試す

よくある質問

Q. 合同会社でも注記表は必要ですか?
A. 必要です。建設業法施行規則第10条第1項第1号では、株式会社以外の法人も様式第15号から第17号の2までによる貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・注記表を提出することとされています。愛知県の手引きの表では、合同会社などの持分会社が記載を要する項目は「2 重要な会計方針」「3 会計方針の変更」「4 表示方法の変更」「6 誤謬の訂正」「17-3 国際最低課税額に対する法人税等」「18 その他」です。
Q. 該当する事項がない項目は空欄のままでよいですか?
A. 記載を要する項目で該当事項がない場合は、「該当なし」と記載するよう案内されています(愛知県の手引きに掲載された記載要領4の抜粋)。記載例でも、会計方針の変更・表示方法の変更・誤謬の訂正などに「該当なし」と書かれています。
Q. 個人事業主も注記表を提出しますか?
A. 提出しません。愛知県の手引きの添付書類一覧では、注記表(様式第17号の2)は法人のみが添付する書類です。個人事業主は貸借対照表(様式第18号)と損益計算書(様式第19号)を作成します。
Q. 経営事項審査を受ける場合、注記表で追加して書くことはありますか?
A. 愛知県の手引きの記載例では、経営事項審査を受審する方は「7 貸借対照表関係(2)」の受取手形割引高・裏書手形譲渡高と、「8 損益計算書関係(5)」の研究開発費の総額の記載が必要と注記されています。研究開発費の総額は会計監査人を設置している会社に限る項目のため、それ以外の会社は「該当なし」と記載するよう案内されています。具体的な書き方は提出先の窓口でもご確認ください。

根拠条文・参考資料

  • 建設業法施行規則 第10条第1項第1号(事業年度終了届に添付する財務諸表)(e-Gov法令検索)
  • 会社法 第2条第5号(公開会社の定義)、第124条第1項(基準日)、第575条第1項(持分会社)(e-Gov法令検索)
  • 愛知県「建設業法による変更届等の手引(事業年度終了届編)」令和8年4月(p.1 添付書類一覧、p.16-17 注記表の記載例、p.18 注記表について〈建設業法施行規則 別記様式第十七号の二 記載要領抜粋〉)

関連記事