工事施工金額(様式第3号)の書き方|公共・民間・下請
事業年度終了届には、工事経歴書(様式第2号)とあわせて「直前3年の各事業年度における工事施工金額」(様式第3号)を添付します。1枚の表ですが、何年分書くのか、公共・民間・下請をどう分けるのか、許可のない工事や実績のない業種をどう書くのかで迷いやすい書類です。
この記事では、愛知県の手引きの記載例をもとに、様式第3号の欄ごとの書き方と、工事経歴書・損益計算書との数字の一致を整理します。
本記事は愛知県知事許可を前提とした一般的な情報です。様式の記載方法や添付書類の取扱いは都道府県によって異なる場合がありますので、提出先の手引きもあわせてご確認ください。
様式第3号とは|個人・法人とも添付する書類
事業年度終了届は、毎事業年度経過後4ヶ月以内に提出する届出です(建設業法第11条第2項)。愛知県の手引きの添付書類一覧では、様式第3号「直前3年の工事施工金額」は個人事業主・法人のどちらも添付する書類とされています。
中身は、その事業年度に完成した建設工事の請負代金の額を、業種ごとに、元請(公共・民間)と下請に分けてまとめた表です。工事経歴書が1件ずつの明細だとすれば、様式第3号はその集計表にあたります。事業年度終了届全体の流れは「事業年度終了届(決算変更届)とは?期限と主な必要書類」で整理しています。
何年分書く?|愛知県は届け出る事業年度の分だけ
様式の名前は「直前3年」で、様式の記載要領にも「申請又は届出をする日の直前3年の各事業年度に完成した建設工事の請負代金の額を記載すること」とあります。しかし愛知県の手引きの記載例には、次のように注記されています。
- 届出する事業年度の期間のみ書きます。3年分書く必要はありません。
- 個人事業の期間は、1月1日から12月31日までです(期は記入しません)。
記載例では、表の一番上の段に「第22期 令和7年2月1日から令和8年1月31日まで」と1期分だけが書かれ、残りの段は空欄です。なお、何年分を求めるかは都道府県で違いがあります(「決算変更届は都道府県で違う?愛知・東京・大阪を比較」)。愛知県以外に提出する場合は、提出先の手引きで確認してください。
表の構成|縦に「元請・下請」、横に「業種」
| 方向 | 並んでいるもの |
|---|---|
| 縦(行) | 事業年度ごとに「元請 公共」「元請 民間」「下請」「計」の4行 |
| 横(列) | 「許可に係る建設工事の施工金額」(許可業種ごと)→「その他の建設工事の施工金額」→「合計」 |
右上には「(税込・税抜/単位:千円)」の表示があり、該当するほうに丸を付けます。
欄ごとの書き方(愛知県の記載例から)
| 欄 | 書き方 |
|---|---|
| 税込・税抜 | 該当するものに丸を付けます。決算書の会計処理にあわせます |
| 単位 | 千円単位で表示します。会社法第2条第6号に規定する大会社は百万円単位で表示することができ、その場合は「(単位:千円)」を「(単位:百万円)」とします |
| 許可に係る建設工事(業種) | 許可を受けている建設工事の種類を書きます。届出書提出時点で有効な全ての業種について記載が必要です |
| 元請 公共 | 元請(施主から直接受注したもの)のうち、注文者が国、地方公共団体、法人税法別表第一に掲げる公共法人(地方公共団体を除く)および建設業法施行規則第18条に規定する法人である施設・工作物の工事の合計額 |
| 元請 民間 | 元請のうち、公共以外のもの |
| 下請 | 他の建設業者が請け負った工事の一部を請け負ったもの。すべて下請として書きます |
| その他の建設工事 | 許可を受けていない建設工事の施工高を計上します(製造・販売・雇傭・委任等の兼業売上は除く)。この欄に計上したときは、工事経歴書を「その他」として作成します |
| 合計 | 工事の施工金額の合計を千円単位で計上します |
実績のない業種は「0」
許可を受けている業種でその年度に完成した工事がない場合は、計の欄に「0」と記入します(その他の建設工事は除く)。手引きでは、実績なしの業種はまとめて記載しても構わない(文字が見える範囲で)とされています。記載例でも、実績のない2業種を「舗装・塗装」と1つの列にまとめ、計を0としています。
5業種以上で2枚になるとき
記載要領では、許可に係る建設工事の種類が5業種以上にわたり用紙が2枚以上になる場合、「その他の建設工事の施工金額」と「合計」の欄は最終ページにのみ記載するとされています。
記載例の数字で確かめる
愛知県の手引きの記載例(第22期、税抜、単位:千円)は次のとおりです。
| 区分 | 土木一式 | とび・土工・コンクリート | 舗装・塗装 | その他 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 元請 公共 | 59,000 | 59,000 | |||
| 元請 民間 | 57,500 | 35,000 | 2,500 | 95,000 | |
| 下請 | 945,630 | 12,500 | 958,130 | ||
| 計 | 116,500 | 980,630 | 0 | 15,000 | 1,112,130 |
縦に足しても(59,000+95,000+958,130)、横に足しても(116,500+980,630+0+15,000)、合計は1,112,130千円になります。提出前に縦・横の両方で検算しておくと、転記ミスを見つけやすくなります。
提出前に確認したい3つの一致
①業種ごとの計=工事経歴書の各業種の合計額
手引きでは、業種ごとの合計額は様式第2号(工事経歴書)に記載した各業種の合計額と一致していなければならないとされています。記載例でも、とび・土工・コンクリート工事の工事経歴書は「合計 200件 980,630千円(うち元請工事 35,000千円)」で、様式第3号の計980,630・元請(民間)35,000と一致しています。その他工事の工事経歴書(合計18件 15,000千円、うち元請工事2,500千円)も同様です。
工事経歴書に何件・どこまで書くかは、経営事項審査を受けるかどうかで変わります(「工事経歴書の書き方|経審の有無で変わる記載ルール」)。
②合計=損益計算書の完成工事高
手引きでは、合計の額は添付する損益計算書の完成工事高と一致し、個人の場合も同様とされています。記載例の損益計算書(様式第16号)でも、完成工事高は1,112,130千円で、「様式第三号の直前決算の工事施工金額の合計欄の金額と一致します」と注記されています。完成工事高と兼業事業売上高の区別は「完成工事高とは|兼業事業売上高との違いと経審への影響」で解説しています。
③税込・税抜の丸=工事経歴書・決算書の会計処理
様式第3号と工事経歴書には、どちらにも税込・税抜に丸を付ける欄があり、いずれも決算書の会計処理にあわせるよう案内されています。記載例では両方とも「税抜」に丸が付いています。経営事項審査を受ける場合の扱いは「建設業の財務諸表の作り方|決算書からの組替え5ステップと勘定科目対応表」のFAQもあわせてご覧ください。
迷いやすいポイント
- 保守点検・維持管理・剪定などの売上:手引きでは、保守点検や維持管理業務、樹木の剪定など役務の提供にあたる業務は工事に該当しないとされ、損益計算書では兼業事業売上高に計上します。様式第3号の「その他の建設工事」にも入れません
- 公共か民間か:区分は「注文者が誰か」で決まります。元請工事の注文者が記載要領の「公共」(国・地方公共団体・公共法人など)に当たるか判断に迷う場合は、提出先の窓口に確認してください
- 業種の並び:表紙(事業年度終了届出書)・工事経歴書・様式第3号の業種がそろっているかを最後に確認すると、記載漏れを防げます(「事業年度終了届出書の書き方|表紙の記載と代理時の注意」)
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財務諸表の転記を時短して、様式第3号・工事経歴書との一致の確認に時間を回せます(転記結果の確認は利用者の方で行っていただく範囲です)。
よくある質問
- Q. 様式第3号は「直前3年」とありますが、3年分書く必要がありますか?
- A. 愛知県の手引きの記載例では、事業年度終了届では届け出る事業年度の期間のみを書き、3年分書く必要はないと案内されています。都道府県によって扱いが異なる場合があるため、愛知県以外に提出する場合は提出先の手引きで確認してください。
- Q. 許可を受けている業種で、その年度に工事の実績がない場合はどう書きますか?
- A. 愛知県の手引きでは、実績なしの場合は計の欄に「0」と記入するよう案内されています(その他の建設工事は除く)。実績なしの業種は、文字が見える範囲でまとめて記載しても構わないとされています。
- Q. 保守点検や樹木の剪定の売上は「その他の建設工事」の欄に入れますか?
- A. 入れません。愛知県の手引きでは、その他の建設工事の欄は製造・販売・雇傭・委任等の兼業売上を除くとされ、保守点検や維持管理業務、樹木の剪定など役務の提供にあたる業務は工事に該当しないとされています。これらの売上は損益計算書の兼業事業売上高に計上します。
- Q. 様式第3号の合計は、どの書類の数字と一致させますか?
- A. 愛知県の手引きでは、業種ごとの合計額は工事経歴書(様式第2号)に記載した各業種の合計額と、全体の合計は添付する損益計算書の完成工事高と一致すると案内されています。個人の場合も同様です。
根拠条文・参考資料
- 建設業法 第11条第2項(事業年度終了届)(e-Gov法令検索)
- 建設業法施行規則 様式第三号(直前3年の各事業年度における工事施工金額)とその記載要領(e-Gov法令検索)
- 愛知県「建設業法による変更届等の手引(事業年度終了届編)」令和8年4月(p.1 提出期限・添付書類一覧、p.2 事業年度終了届出書の記載例、p.3 工事経歴書の記載例、p.4 工事経歴書(その他工事)の記載例、p.9 様式第三号の記載例と記載要領、p.13 損益計算書の記載例)